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  • 河本 ワダチ

新しい世界を生きるための14のSF



編者:伴名練

出版社:早川書房


 SF大好き!

 この本は、そんな人に向けて、AIが進歩したりコロナが流行ったりしている現代に対応した、新進気鋭の新人SF作家14人による渾身の短編集となっています。前書きでは、「『三体』の次に読むべきSFはこれだよと広めてください」とあったので、私も加勢できればと思い紹介文を書かせていただきます。


 本書は短編とはいえ14本もお話が載っているので本自体割と分厚いです。しかし、目次には「宇宙」「超能力」「VR」のようにタイトルと共にそれぞれのテーマが記載されているので、自分の気になった作品からつまみ読みしていくことも可能になっています。普段あまり本を読まないよという方でも手に取りやすいのではないでしょうか。


 私が特に気に入っている作品は、1番目に掲載されている八島游舷の『Final Anchors』

です。AIの自動運転が当たり前になった近未来。AI搭載車には不測の事態に備えて、緊急停止用の通称“ファイナル・アンカー”が備え付けられている。しかしアンカーを射出して車を停止させると搭乗者は衝撃に耐えられず死亡してしまう。ある交差点、二台の車の衝突予測は0.488秒後。どちらが“アンカー”を射出して犠牲になるべきか、AI同士の最終審判が始まる…。

 このお話はAI同士の対話で進行していきます。どちらにこの事故の責任があるか、搭乗者

はなぜこうしなかった、運転手の社会的地位は、など多角的な視点で犠牲者を決めるんですが、AIの中に感情が見えたりして話が複雑になっていくさまが非常におもしろく、ぜひ読んでもらいたい一作です。自動運転の倫理問題について考えるきっかけにもなりました。ちなみに結末はかなり“エモい“です。


 他にも江戸時代に繰り広げられたスパコン騒動を描く『大江戸しんぐらりてぃ』や“某激安の殿堂“が蔓延したサイバーパンク世界を描く『ショッピング・エクスプロージョン

』、あの大流行した感染病が存在しない鏡の世界との接続を描く『それはいきなり繋がっ

た』など、最新のSFテーマを新鮮な切り口で調理した短編がたっぷり14作収録されてい

ます。

 いよいよSF(サイエンス・フィクション)がSNF(サイエンス・ノンフィクション)になっていく21世紀。新世界を生き抜くために、新しい価値観を本書で“インストール”していきましょう!



Text:3年 河本 ワダチ

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